ごあいさつ

最新情報

2021-11-30 06:10:00

東日本大震災の際、石巻市全体では死者(関連死含む)・行方不明者が約4000人にせまる被害が出ました。

その中で石巻赤十字病院は、地域災害拠点病院となるべく震災の5年前に移転・新築して建てられたもので、免震構造や設備に災害対応を施していたことで、地震直後においても石巻地区で病院機能を維持することができた唯一の施設として、多くの人命を救うことができたそうです。

その有効性が評価され、その後の各地での病院建築の参考になったとのこと。

今回、外からだけですが視察してきました。

石巻赤十字病院01.jpg 石巻赤十字病院02.jpg

 

 

石巻赤十字病院03.jpg

 

石巻赤十字病院04.jpg

裏側のヘリポートです。

 

なお、震災時の備えと実状は以下の通りだったそうです。

災害時の備えとして、とても参考になる情報でした。

 

(出典:『石巻赤十字病院の震災時の被害状況と対応 -医療ガスを中心として-』Medical Gases, 14 (1):25-28, 2012 より)

以下抜粋 ====================================

予想された宮城県沖地震に対する備え

 ・建物の免震構造

  地震の水平エネルギーを免震層で吸収する

 ・重化電源(受電)

  受電本線が停電しても予備電源で受電可能

 ・非常用発電機(自家発電)

  燃料として3 日分の重油2 万L を確保

 ・無停電電源装置

  一時的な停電も好ましくない医療機器などは無停電装置を介したコンセントに接続

 ・液化酸素の備蓄

  タンク内の液化酸素の残量を通常使用量の14日分以上に維持する

 ・衛生設備

  上水と雑用水による2 系統給水による危険分散

  上水備蓄:190t(半日分) 雑用水備蓄:470t(3日分)

 ・空調設備

  非常用電流による最低限必要な空調の確保

 ・食糧

  入院患者用3 日分

 ・災害対策マニュアルの整備と職員教育の徹底

・トリアージスペースの確保

 正面玄関を広くし,庇を大きく張り出させてトリアージエリアとするとともに,玄関を入ってすぐのホールも広くして多数の患者を収容できるようにした。また,ホールの壁には4ヵ所,酸素配管のアウトレットを設けた。

 

実情

 ・患者・職員など:死亡,けが人なし

 ・建物・設備:損傷は最小限度で,使用不能になった部屋,重要機器などはなかった。

 ・電気:商用電源の停電と同時に自家発電に切り替えた。

   震災3日目の13日朝には発電燃料の重油が底をつきかけたが,新潟からのタンクローリーが間に合い重油を確保できた。   13 日昼には商用電源も復旧した。

 ・給水:水道は5 日間停止した。備蓄している貯水タンクからの給水は2 日目には底をついたが,市の水道局と民間の給水車による供給がぎりぎり間に合った。

 ・都市ガス:供給が完全にストップし,仮復旧まで21 日,完全復旧まで1ヵ月を要した。当院のボイラーの燃料は都市ガスを使用していたため,その停止によりオートクレーブおよびEOGガス滅菌器が使えなくなり,滅菌業務に大きな支障を来した。また,ボイラーの熱源を必要とするメインの空調もストップした。さらに厨房での調理も大きな制約を受けた。

 ――病院新築にあたり,ボイラーの燃料として都市ガスのほか重油も使える2 重方式を検討したが,予算の関係で

見送った経緯がある。都市ガスは重油などに比べ価格が安定しており,二酸化炭素の排出も比較的少ないという利点があるが,大きな地震の度に長期間供給が止まるという大きな欠点も有している。

 ・通信・インターネット:電話は固定・携帯とも3 ~ 4 日間不通,インターネットは約10日間不通であった。ただし,石巻市と直通の防災無線とNTTが持ち込んでくれた衛星携帯電話は比較的早く繋がり日本赤十字本社や宮城県との連絡に使われた。

 ・エレベーター:3 日間使用できず入院病棟への患者の搬送も,入院患者300 人分の食事も人手に頼らざるを得なかった。時間がかかったのは,いったん止まったエレベーターは,必ず専門業者が安全点検をしなければ動かせないのだが,その業者が冠水のため来院できなかったからである。

 ・オーダリングシステム(一部電子カルテ):使用可能

 ・血液・放射線などの検査体制:緊急対応問題なし

 ・ヘリポート(地上):急患室入り口までの数十メートルのアプローチには何ヵ所か陥没がみられたが,ヘリポート自体には問題なかった。今回の震災では多くの患者・物資の搬送に大いに利用され,有用性を発揮した。

 ――当初へリポートを屋上にという案もあったが,震災時にはエレベーターの停止が予想されたため,地上の案が採用された。

 ・手術室:震災発生時には4 件の全身麻酔手術が行われていたが,全員無事に帰室させることができた。また,配管を含めた設備,機器等にも明らかな損傷はなかった。

無停電電源装置および自家発電が機能し,モニターや麻酔器なども全く停止しなかった。ただ,ボイラー停止により,プラズマ滅菌器と電気式の小型のオートクレーブしか使えなくなり,滅菌業務が大きく制約されたため,手術の受け入れ制限も予想された。しかし,震災後しばらくは臨時手術のみの対応としたため,実際の手術数は1ヵ月78件で通常の1/4程度と少なく,結果的に手術受け入れの対応に苦慮することはなかった。手洗い用水の使用制限もあったが,手洗せず消毒薬で手もみ後に2 重に手袋をつけることで対応した。

 ・医療ガス関連について(省略)